前編:姓を継ぐことに向き合った私の物語

父親は祖父が幼いころに戦死したため一人っ子。祖父の遺言が姓と墓を守っていくことだったのです。

姉の結婚で背負うことになった「姓を継ぐ役割」

私は姉と二人姉妹。姉が先に結婚したことで、私はその瞬間から「姓を継ぐ役割」を背負うことになりました。姉にはその責任がなくなり、残されたのは私。結婚をしていなかった私は、その時からずっと、心のどこかで重たい思いを抱え続けることになったのです。

父の生い立ちと受け継がれた「姓を残す使命感」

この背景には、父の生い立ちがありました。父は田舎の出身で、祖父から「姓を絶やしてはいけない」という考えを強く受け継いでいました。その思いを子である私にも引き継ごうとしたのです。特別な家柄というわけではありませんが、「姓を残すこと」だけは我が家にとって譲れない使命のように語られてきました。

自然な流れを変えた、初めての「姓を変えて欲しい」という言葉

当時お付き合いしていた男性とは、「姓を変えてほしい」という話をしたことは一度もありませんでした。ごく自然に、私が相手の姓に変わって結婚するものだと思っていたからです。けれど姉の結婚によって状況は変わり、私が実家の姓を残さなければならない立場になりました。

途中でそんな話にならなければ、おそらく私はその人と結婚していたと思います。ところが、私が初めて「姓を変えてほしい」と切り出したときから、二人の関係は一気にぎくしゃくしました。

相手の家族とのすれ違い、姓を継ぐことから遠のく結婚への道

親同士の顔合わせも、相手のご両親が納得できないまま進められました。相手の兄は転勤族で遠方に暮らしていたため、ご両親は弟である彼を地元に住まわせておきたい、と強く望んでいたのです。

私は結局、その男性と別れた後、二年間ほどの期間は「姓を変えてもらう」話は出来ないまま、他の男性数名と結婚を意識しながらお付き合いをしていました。しかしこの男性となら結婚してもいいという男性には巡り合えませんでした。それ以上に、その結婚する予定だった男性との、長い付き合いの果てに結局別れることになった事実から、立ち直ることが出来ていなかったのです。

友人の中で男性に姓を変えてもらった人は本当に少なく、私の周りでは一人しかいませんでした。その友人は養子縁組をして、結婚資金をすべて女性側が負担し、車まで買ってもらっていました。そこまでしてでも姓を残したい、という家庭があるのだと知り、私の家にそんなことができるのかと何度も考えました。

私の家庭は、父が普通のサラリーマン、母はパート勤めで、夜には夫婦で父の仕事の内職をして家計を支えていました。特別裕福でもなく、むしろ堅実に暮らしているごく普通の家庭です。そんな家が「姓を残すために男性に来てもらう」など、本当に可能なのだろうか?と、悩んでばかりいました。

悩みと葛藤の末にたどり着いた人生の転機

姉は気楽に結婚して姓を変えていきましたが、私は突然その役割を背負わされ、一人で悩み苦しみ何年も経ちました。まわりの友人たちが自然に好きな人と結婚して、夫の姓を名乗る姿が羨ましく、どうして自分だけが特別な役割を担わなければならないのか、と心の中で何度も問いかけていました。

この先、私の人生を大きく変える出会いが待っていました。

👉 この続きは、こちらの記事に書きました。
夫が私の姓を選んでくれた日

タイトルとURLをコピーしました