後編:夫が私の姓を選んでくれた日

まわりの友人たちが自然に好きな人と結婚して、夫の姓を名乗る姿が羨ましく、どうして自分だけが特別な役割を担わなければならないのか、と心の中で何度も問いかけながら日々過ごしていました。

出会いと結婚までの歩み

そんな時、姉の学生時代の友人を通じて紹介されたのが、今の夫でした。
夫にも過去に結婚を考えた女性がいたそうですが、相手の父親から「年下だから」という理由で反対され、叶わなかった経験があったと聞きました。その後もいくつかのお付き合いはあったものの、結婚には至らなかったそうです。

そんな二人が出会い、意気投合し、出会ってからわずか7か月で結婚式を挙げることになりました。

夫が私の姓を選んでくれた決断

夫は「状況がそうなら」と、姓を変えることを迷わず受け入れてくれました。調べると、男性が姓を変える結婚は全体のわずか5%ほど。当時は特に珍しい選択でした。

さらに、結婚する際、周囲の同年代の男性たちからはよく「お父さん、代々お商売でもしてはるん?」「ご養子さんってすごいお金持ちなんちゃうん?」などと聞かれました。
しかし実際は、我が家は普通のサラリーマン家庭で、ただ田舎出身の祖父の遺言に従って姓を継ぐだけのこと。両親には養子縁組の知識もなく、形式としては単なる「婿入り」でした。
それでも夫は迷うことなく私の姓を選んでくれた。本当にあり得ないくらい、心から尊敬できる人なのです。

理想の夫との暮らしと支え合い

夫は、スラッとした高身長で男前。私が理想とする男性の要素をすべて兼ね備えていました。外見だけでなく、真面目で行動力があり、困難が起きてもすぐに判断して解決してくれる人。子育ての中で直面した数々の難題にも、真摯に向き合ってくれました。

運命に導かれた出会いの奇跡

また、先日夫とこのご縁について話していた時、夫は「縁というのは紹介があったからじゃなく、どうしたって出会うようになっているものだ」と言っていました。
実際、私は本当は夫と同じ高校を受験したいと思っていたのに、父に反対されて受験できなかった過去があります。
また、高校時代の友人のお姉さんは夫の同期で、一緒に遊ぶ機会があったかもしれない。
さらに、私は夫の会社の入社試験を受けたいと思ったことがありましたが、別の推薦が決まっていて受けられなかったこともありました。
――そう思うと、別の形でも出会えていたかもしれない。やはり、このタイミングで出会えたことは、運命に導かれていたのではないかとさえ思います。

ASDの私を支えてくれた29年間

私はASDという特性を持っています。29年間の結婚生活の中で、夫は私とのコミュニケーションに相当な苦労をしてきたのではないかと思います。今までは「私が正しい」と思い込んでいましたが、振り返ると「苦労をかけてしまったな」「申し訳なかったな」と思うことが増えました。

これから二人で描いていく未来

これからは、夫がもっと楽しく生きられるように、私も相手の気持ちを思いやりながら共に歩んでいきたい。
姓を継ぐことに悩んできた過去も、夫が選んでくれたおかげで、今の私の暮らしがある。
そしてこれからも、夫と共に、これまで以上に明るい未来を二人で描いていきたいのです。

今、改めて気づいたのですが、こうした恋愛話や結婚までのいきさつ話は、これまで友人たちからも色々と聞かされてきました。一方で私は、こういう心の内を誰にも話さないタイプの人間でした。だからこそ、今こうしてブログという形で自分の思いを言葉にできることが、とてもありがたく、心が軽くなります。読んでくださる方がいると思うと、少し勇気も出ますし、同じような経験をしている誰かの支えになれたら嬉しいとも感じています。

👉 前編はこちらからご覧いただけます。
姓を継ぐことに向き合った私の物語

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