特別編②:契約キャンセル寸前の奇跡
新しい住まいを決めたとき、私は一度、契約をキャンセルしようとしました。
両親や姉の強い反対に押され、不動産会社へ「解約の印鑑を押しに行く」ところまで進んでいたのです。
引っ越しに対する不安
引っ越しそのものに不安は一切ありませんでした。
しかし、人生でそう何度もない大きな買い物です。将来の資産価値を考えると、本当にここでいいのかという迷いが出てきました。
年齢的にも「失敗は許されない」という思いが強く、今まで住んでいた場所よりも資産価値のあるところに家を持ちたいという願いが、心の中に大きくありました。
違約金とオプション代という現実
契約金の返却だけなら、正直に言えば契約解除にしていたかもしれません。
ですが、思ってもいなかったのはオプションの部分でした。すでにシステムキッチンの全面やり替え工事が始まっており、その費用まで違約金の対象となってしまったのです。
金額は想像以上に大きく、家計への負担を考えると軽々しく「やめます」とは言えない現実に直面しました。
不安を解消するために
その日、私は営業の方に将来の資産価値や周辺環境について徹底的に質問しました。
不安に思う点をすべて資料にまとめてもらい、後日不足分も送っていただきました。数字や根拠をひとつひとつ確認しながら、自分たちの本当の気持ちとも照らし合わせていきました。
「契約キャンセルは一旦保留にします」と告げて帰宅したとき、実は心の中では別の恐ろしさも抱えていました。
それは「もしここで再び決断を覆したら、両親にまた激怒されるだろう」という恐れです。家族に反対された手前、揺らぐ自分を責める気持ちもありました。
自分の気持ちに正直になる
それでも、キャンセルのために印鑑を押しに行ったはずの帰り道、心の奥からどうしても抑えられない気持ちがこみ上げてきました。
「やっぱり私は引っ越したい。」
その瞬間、迷いは消え去り、胸の中がすっと晴れたように感じました。
あの時一旦立ち止まったからこそ、本当の気持ちを確認でき、揺るぎない決意を固めることができたのです。
終わりに
もしあの場所で印鑑を押していたら、今の安心に出会えていなかったかもしれません。
迷い、計算し、恐れを感じながらも、最後に自分の気持ちに正直になれたこと。
それは私にとって、小さな奇跡でした。