🍃はじめに
結婚してからの年月の中で、たくさんの喜びと、同じくらいのすれ違いがありました。
けれど今振り返ると、その一つひとつが、夫婦の形を少しずつ整えてきた気がします。
このシリーズは、そんな日々の中で気づいた「夫婦との向き合い方」を、
静かに、ありのままに綴った記録です。
怒りも、戸惑いも、笑いも──
すべてが、長い時間をかけて編まれた“ふたりの物語”です。
束縛したい人、自由でいたい人
「一緒にいたい」と「ひとりになりたい」。その違いがぶつかるたび、ふたりの距離が少し変わる。
犬の話題が出るたびに、内心ハラハラしていた。
「また始まった」と思いながらも、真正面から否定すれば険悪になる。
そんな日々の中で、夫の「癒しの形」が少しずつ変わってきた気がする。
前の家では、12年半犬を飼っていた。
愛情を注げば注ぐほど、それ以上の愛情を返してくれる、私たち家族をいつも見守ってくれていた大切な存在だった。
けれど、今後の20年を考えたとき、きちんと最期までお世話をし続けられるのかと考えると、不安が残る。
実家への行き来もまだ続いており、度々ペットホテルに預けることも難しい。
そんな現実を思うと、今の私には、もうあの頃のように犬を迎える覚悟はできていないのだ。
最近、夫が「今度このお店に食事に行こう」と誘ってくれた。
以前の彼なら、会社からの帰宅後は夕食を食べたらすぐ眠り、お風呂に入るのを促した後、朝まで寝るだけの毎日だった。
けれど今は、少しでも一緒に笑いたい、そんな気持ちが感じられる。
私も「行こう行こう、やったあ☺」と素直に喜んだ。
その瞬間、夫の表情がやわらかくなったのを見逃さなかった。
老後の資金の話も、相変わらず詳しくは知りたがらない。
「全部任せるわ」と言いながらも、
「まずは住宅ローンを返すしかないな」と
私の言葉に少し耳を傾けるようになった。
もしかすると、夫も“犬以外の癒し”を探しているのかもしれない。
私は時間に縛られるのが苦手だ。
ゆっくりお茶を飲み、会話をして、静かに過ごす時間が何より好き。
そんな私のペースを、夫もようやく少しずつ理解してくれているのかもしれない。
お互いが無理せず、心地よく過ごせる関係を探る旅の途中。
一緒に笑える時間がある限り、
夫婦の形は、まだまだ変われる。
犬の代わりに見つけた“癒し”は、
案外すぐそばにあったのかもしれない。
🌸おわりに
夫婦には、正解も完成もないのだと思います。
少し離れて、また近づいて、
そのたびに新しい“ちょうどいい距離”を見つけていく。
これからも、静かに笑って過ごせる時間を大切に、
少しずつ、やさしく、ふたりの形を育てていきたいと思います。
👉 シリ-ズ前回の記事はこちら
→第4話:静かに家庭を守る力