🍃はじめに
結婚してからの年月の中で、たくさんの喜びと、同じくらいのすれ違いがありました。
けれど今振り返ると、その一つひとつが、夫婦の形を少しずつ整えてきた気がします。
このシリーズは、そんな日々の中で気づいた「夫婦との向き合い方」を、
静かに、ありのままに綴った記録です。
怒りも、戸惑いも、笑いも──
すべてが、長い時間をかけて編まれた“ふたりの物語”です。
静けさを選ぶという、強さ
争わず、無理に譲らず。ただ静かに寄り添う。それが、長い年月を経た夫婦のかたち。
夫と暮らして30年。
喧嘩もたくさんしてきたし、怒鳴り合った日もありました。
けれど不思議なことに、私は一度も「夫が嫌い」と思ったことがありません。
怒りっぽいけれど、どこか少年のようで、
本当は誰よりも「私を喜ばせたい」と思ってくれている人だから。
ただ、その愛情表現が少し不器用で、
私が反論すると、とすぐに強い口調で反撃し私を黙らせる。
会社では、重圧の元我慢に我慢を重ねて頑張っていると言う。
家ではその反動で、負けてたまるか、と反撃しているのかもしれない。
私は長いあいだ、そんな夫の感情に合わせて生きてきました。
でもこれからは、もう無理に合わせない。
いつのことだったか夫に、「夫婦といえども元は他人。なんでも好きに言って言いわけじゃないよ。尊重しないと」と言ったことがある。
そのせいなのか、すぐイライラし、我が強い夫が、「また話を聞いてなかったら、【傾聴】と一言言って。」と譲歩してきた。
とはいえ、そんなに急には変わらない。
ただそう言ってくれるようになったのは、
私がこれまでの積年の思いを、少しずつ夫に伝えるようになったからだと思う。
喧嘩が減ったのは、夫の変化も多少はあるが、
私の心が静かになったから。
怒りを受け止めるのではなく、
その向こうにある“寂しさ”を見るようになったから。
これからは、笑って静かな時間を過ごしたい。
特別なことはいらない。
ただ、同じ空気を穏やかに分け合うだけでいい。
静けさを選ぶということは、弱さではなく、強さ。
譲るでも、戦うでもなく、
おだやかに立ち止まること。
それが、長い年月を経たふたりがたどり着いた
ひとつの答えなのかもしれません。
🌸おわりに
夫婦には、正解も完成もないのだと思います。
少し離れて、また近づいて、
そのたびに新しい“ちょうどいい距離”を見つけていく。
これからも、静かに笑って過ごせる時間を大切に、
少しずつ、やさしく、ふたりの形を育てていきたいと思います。
👉 シリ-ズ前回の記事はこちら
→第6話:静かに譲らない、という優しさ