🌿 第8話:調和という静かな力

夫と暮らしていると、ふとした瞬間によく思うことがあります。
人はみんな、それぞれ違うリズムで生きているのだな、ということです。

夫は外の世界で強く、まっすぐに生きる人です。
責任感も強く、いつも何かを成し遂げようとしながら、前へ前へと進んでいるように見えます。

私はどちらかといえば、静かに考えたり、感じたりしながら、
小さな幸せを丁寧に拾っていくほうが好きです。
植物に水をあげたり、部屋の空気を感じたり、心の動きをそっと確かめたり。
そういう穏やかな時間を大切にして生きています。

そんな二人が同じ家の中で、同じ空気を吸いながら呼吸を合わせていくということは、
時にむずかしく、時にあたたかいものです。

若い頃は、お互いの違いに戸惑うこともありました。
けれど、その違いにゆっくり向き合う時間も、余裕もなく、
気づけば年の近い3人の子育てに全力を注ぎながら、
なんとか毎日を積み重ねていました。

そして結婚して30年。
子育ても落ち着き、子どもたちが独立し、二人だけで過ごす今。
はじめて「どうやってこれから二人の空気を整えていこうか」を
丁寧に考えたいと思うようになりました。

これまで心のどこかで、違和感にふたをしたまま生きてきた私ですが、
それが少しずつできなくなってきたのです。
むしろ、自分の気持ちに素直に向き合いたいと思うようになりました。


たとえば、夫が黙ってコーヒーを淹れる音。
その音を聞きながら、私はブログを書いたり、植物に水をあげたり。
同じ空間にいながら、それぞれが好きなように過ごしている時間。

相手に遠慮せず、自分を小さくしないまま、
お互いがそれぞれのペースで過ごせる時間。
そんな当たり前のような瞬間を、一つひとつ自然に積み重ねていくこと。
それが、私たちにとっての “調和” なのかもしれません。

調和とは、無理に合わせることでもなく、我慢することでもありません。
相手の波を見ながら、自分の波も静かに守っていくこと。
違いを否定せず、認め合いながら、
心のどこかで「この人と生きてきてよかった」と思える時間を
そっと重ねていくことなのだと思います。

長い年月を経て、ようやく私たちに、
二人の関係に静かに向き合える時間が訪れたのだと感じています。


💞 あとがき —「好きやからに決まってるやん」

昨日、ふと夫に聞いてみました。
「どうして、私と離れず毎日一緒に過ごしたいと思うの?」と。

すると夫は、少しも考えずに即答しました。
「それは好きやからに決まってるやん!」

恥ずかしげもなく、真顔でそう言い切る夫を見て、
思わず笑ってしまいました。

この年になっても、そんなふうにまっすぐな言葉をくれるところが、
やっぱり可愛いなあ、と思うのです。

夫婦の調和は、いつも静かなところにある。
でも時どき、こんなふうに
「好きやからに決まってるやん」と笑ってくれる声の中にも
確かに存在しているのだと、あらためて思いました。

前回の記事はこちら
👉第7話:静けさを選ぶという、強さ

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